2024-07-18 聴くこと
話しているその人は気づいていないだろうけど、聞いているこちらがわにははっきりと見ている、ようなことがあると思う。話しをしているときの言い淀み方なのか、視線のやりかたなのか、ちょっとした体の動きなのか、特定の色合いの話題に対する顔色や語気の変化。その人が話していない時の仕草や発している色ももちろん、ものへの目のやりかた、その体が立てる音…そういうすべてを総合してその人の奥に潜り込み、小さな石を拾い上げるように聴く。それがすぐにうまくつながってゆくこともあれば、繋がりが見えるまでには時間がかかることもある。
そういうことをしている時、自分が何を見ているんだろう。話を聴く時、私はどこかを真剣に見ている。目をこらせばその疵のはじまりが見えるかのように。逆に見ている時には耳を澄ませている。五感がからまりあい総動員してなにかを知ろうとしているんだろうな。
そんな風に人の話を聴くことは、体をほぐしていくことととても似ている。時間をかけて、意味のあるかもしれないことも、ないかもしれないことも、少しずつ辿ったりあるところでは切り込んでいったりして、心地よかったり少し痛みをともなったりしながら、引っ掛かりを探していく。こんな風にして誰かの失くしものを探し出したり、長年のつかえをほどいたりする。